白内障手術症例②
白内障手術症例
白内障手術において、選択することができる眼内レンズには様々なものがあり、それぞれのレンズの特徴も異なっています。手術を受ける上での参考としていただけるよう、当院での手術症例をご紹介していきたいと思います。今回のコラムでは、自費診療の多焦点眼内レンズであるIntensityを使用した症例についてご紹介します。
症例 5焦点眼内レンズ(Intensity)
70代男性
主訴
2年前から見えづらさ、眩しさを自覚
今年の健診で白内障を指摘された
術前の状態
- 両眼とも近視で日常生活は遠近両用の眼鏡を常用されている
- 両眼に皮質白内障および軽度の後嚢下混濁による視力低下を認めた
治療概要
患者様はもともと近視で裸眼の視力は良くありませんでしたが、遠近両用の眼鏡を常用しているため、遠くも近くもあまり不自由なく見る生活に慣れていました。現役でお仕事をされているため、書類仕事に対応できるように、手元の視力を重視したい、また、運転もするため出来るだけ夜間の異常光視症(グレア・ハロー)が少ない眼内レンズをご希望されました。手術前の検査で多焦点眼内レンズの使用が望ましくない緑内障などの眼疾患や角膜の高次収差が認められなかったことから、3焦点もしくは5焦点の眼内レンズをご案内させて頂いたところ、焦点が複数ある眼内レンズの中でも夜間の異常光視症が少ないIntensityを選ばれました。お仕事がお忙しいことから、両眼同日の手術を希望されました。
術前視力
遠見視力(5m) ※( )は矯正視力
Vd(右眼) 0.3(0.7)
Vs(左眼) 0.1(0.9)
術後視力
遠見視力(5m)/中間視力(1m)/近見視力(40cm)
Vd(右眼) 1.2 1.2 1.2
Vs(左眼) 1.2 1.2 1.2
術後の感想
とても快適。異常光視症は夜間の光に輪(ハロー)ができるが、運転に支障はない。眼鏡をかけなくなったため友人に驚かれることが多く、お勧めをしています
世界唯一の「5焦点眼内レンズ」であるIntensity(インテンシティ)は焦点距離が近方40㎝、中近60㎝、中間80㎝、遠中130㎝、遠方の5箇所で、その特性として近くから遠くまで連続的に見ることのできる眼内レンズです。近方も焦点距離が40cmと見やすく、海外の臨床研究では85%の患者様が眼鏡が不要と回答されています。
夜間の運転の際に光がまぶしく感じる異常光視症も焦点が複数ある眼内レンズの中では最小限に抑えられているため、運転をされる方にも選んで頂ける眼内レンズとなっています。5か所に光を分配していますが、その際に生じる光エネルギーロスが6.5%と少なく、光エネルギーが最大限に活用されている為、見え方の質である「コントラスト感度」も他の多焦点眼内レンズに比べてもかなり良好であると言えます。
Intensityは視力だけでなく見え方の質も良い為、患者様の様々な日常の活動をカバーできるレンズです。回折型の眼内レンズでは最もお勧めすることのできる眼内レンズですが、残念ながら日本では未承認の眼内レンズのため、検査費用や手術費用は全て自由診療となります。
夜間の運転をされない方で、近方視力を重視される場合は、今回ご紹介したIntensity以外に、選定療養の3焦点眼内レンズであるPanOptixやFinevision HP、Gemetricをお勧めします。Intensityほどではないですが、夜間の異常光視症が少なくなるように設計されており、その性能から眼鏡の使用頻度を出来るだけ減らしたい方にお勧めすることの出来る多焦点眼内レンズです。
もし、老眼鏡の使用が許容できる方であれば、選定療養の眼内レンズであるClareon Vivity、自費の眼内レンズであるMiniwell ReadyやEvolveがお勧めとなります。これらの眼内レンズは多焦点眼内レンズの中でもコントラスト感度が高く、夜間の異常光視症もほとんどない焦点深度拡張型の眼内レンズであり、近方視力がやや弱いことを除けば自然に近い見え方を実現可能な大変優れた眼内レンズです。特にEvolveは患者様の近視や乱視に合わせてオーダーメイドが可能となっているため、他の眼内レンズでは適応とならないような最強度近視の方や乱視が強いために多焦点眼内レンズをあきらめていた方でも選択できる可能性があります。
当院では多焦点眼内レンズの力を最大限に引き出すために、手術前の検査において、最新の光眼軸測定器であるARGOSを使用しており、これにより高い精度で患者様の眼軸を測定することができ、屈折誤差が最小限となる眼内レンズ度数の選択が可能となっております。また、ARGOSは他社の検査機器では測定できないような進行した白内障でもほぼ100%測定が可能となっており、多くの患者様の術後視力の向上に繋がっています。また、角膜形状解析装置であるCASIA 2を使用することにより、通常の白内障手術前に測定される角膜前面乱視だけではなく、角膜後面乱視や不正乱視などによる高次収差の測定が可能となり、多焦点眼内レンズの適応の有無や術後の乱視の軽減を高い精度で行うことができております。当院ではさらに、ORAシステムという手術中にリアルタイムで眼の状態を測定し、世界中のビッグデータと比較することで最適な眼内レンズ度数や乱視軸を選ぶことができる器械を導入・使用しており、患者様の術後の屈折誤差を可能な限り少なく、精度の高い手術を受けて頂けるよう心がけています。
当院では手術するかどうか迷われている方、検診などで白内障を指摘され、今すぐ手術が必要ではないものの将来的な選択肢を知りたい方など、すべての患者様に正しい情報を知ってもらい、将来を見据えた治療を選択していただきたいと考え、白内障の無料相談会も開催しております。どうぞお気軽にお問い合わせください。