院長コラム

白内障手術症例④

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白内障手術症例

白内障手術において、選択することができる眼内レンズには様々なものがあり、それぞれのレンズの特徴も異なっています。手術を受ける上での参考としていただけるよう、今後、当院での手術症例をご紹介していきたいと思います。今回のコラムでは、選定療養の対象となる多焦点眼内レンズであるClareon PanOptixClareon Vivityを片眼ずつ使用したMix & Match法の症例についてご紹介します。

 

症例① Mix &Match(Clareon PanOptix+Clareon Vivity)   
60代女性(レーシック手術歴あり)

主訴

  数年前から「見にくい」「まぶしい」と感じる

術前の状態
  •   両眼とも20年前にレーシックの手術歴あり
  •   両眼とも良好な矯正視力を維持していたが、水晶体の皮質混濁を認めた
  •   眼底に特記すべき異常なし

 

治療概要①右眼

 患者様は20年前にレーシックを受けられ、裸眼視力は良好でした。老眼のため仕事中のみ遠近両用コンタクトレンズを使用していましたが、今回多焦点眼内レンズへの強い希望がありました。

 レーシック既往眼は術後に屈折誤差が出やすく、誤差に伴い多焦点眼内レンズの性能を十分に発揮できない場合があります。患者様と十分に相談させて頂き、まずは利き目でない右眼から手術を行い、屈折の安定を確認したうえで1か月後に左眼を手術する計画としました。

 手術前の検査で多焦点眼内レンズの使用が望ましくない緑内障などの眼疾患や角膜の高次収差は認められませんでした。運転をされるものの、近方の視力を重視されたため、右眼には3焦点眼内レンズであるClareon PanOptixを勧めさせていただきました。

 

術前視力                                                

      遠見視力(5m)    ※( )は矯正視力                               

Vd(右眼)    1.2(1.2)                           

Vs(左眼)     1.0(1.2)                                        

術後視力

   遠見視力(5m)/中間視力(1m)/近見視力(30cm)

 Vd(右眼) 1.2               1.2                  1.2

 

右眼術後の感想

 「とてもよく見えるようになり老眼鏡も不要。ただしピントを合わせるのに少しコツが必要。許容範囲ではあるが、夜間の異常光視症があるため左眼はもう少し自然な見え方にしたい。」

 

  • 治療概要②左眼

 右眼術後の経過は良好で屈折誤差も認められませんでしたが、夜間の軽度なハロー・グレアと近方のピント合わせの違和感が残ったことから、利き目である左眼にはもう少し自然な見え方の眼内レンズを希望されました。近方はすでに右眼で良好な視力が得られているため、手元の視力がやや弱いものの、見え方の質であるコントラスト感度の低下がない焦点深度拡張型の眼内レンズであるClareon Vivityを勧めさせていただきました。

術前視力                                                

      遠見視力(5m)    ※( )は矯正視力                             

Vd(右眼)    1.2(1.2)                           

Vs(左眼)     1.0(1.2)                                         

術後視力

   遠見視力(5m)/中間視力(1m)/近見視力(40cm)

 Vd(右眼) 1.2               1.2                  1.2

  Vs(左眼) 1.0           1.2                  1.2

左眼術後の感想

 「近くを見る時に以前より自然に焦点が合うようになった。夜間は遠くの光が少しぼやけるが、近くの信号は問題なく、運転には支障がない。」

 

 今回左眼に使用した3焦点眼内レンズであるPanOptixは当院で最も使用している多焦点眼内レンズになりますが、私の実感としては術後に眼鏡を必要とする方はほぼいらっしゃいません。夜間の異常光視症(ハロー・グレア)は出るものの、許容できる程度であり、術後の屈折誤差も生じにくいため、非常にお勧めしやすい眼内レンズです。また、PanOptixの焦点距離は中間が60cm、近方が40cmとなっていますが、1mや30cmの視力も高い確率で良好であり、異常光視症を除けば遠方から近方まで満遍なく見える優れた眼内レンズだといえるでしょう。

 また、右眼に使用した焦点深度拡張型の眼内レンズであるVivity3焦点眼内レンズであるPanOptixと並んで当院で多く使用している多焦点眼内レンズになります。見え方の質であるコントラスト感度単焦点と同程度と優れているため、緑内障や軽度の眼底疾患がある方でも選択肢にすることのできる非常に優れた眼内レンズとなっています。これまでは乱視矯正が出来なかったため、このレンズを使用できる方が乱視の少ない方に限定されてしまっておりましたが、幸いにも2025年5月に乱視用のVivityが国内で承認されたため、当院では多くの患者様にご使用いただいており、大変評判の良い眼内レンズとなっております。

 両眼とも同じ眼内レンズを使用する場合で夜間の運転を重視される方、なおかつ近方視力を重視される方は、焦点が5か所あり遠方から近方まで満遍なく見える上に、複数の焦点を持つ多焦点眼内レンズの中で最小限の異常光視症に抑えられるIntensityをお勧めします。保険を使用できない自費の眼内レンズとなりますが、その性能や異常光視症の少なさから、現在選択することの出来る多焦点眼内レンズの中で最高峰の眼内レンズと言えるでしょう。
 もし手術は保険を使用することのできる選定療養の眼内レンズから選びたい場合は、今回ご紹介させて頂いた焦点深度拡張型と3焦点眼内レンズのMix & Matchは「夜間運転を重視しながらも近方視力を確保したい方」にとって最適な選択肢のひとつと言えるでしょう。保険適用の選定療養レンズで実現できる高性能な組み合わせとして、多くの患者様に満足いただいております。

 当院では多焦点眼内レンズの力を最大限に引き出すために、手術前の検査において、最新の光眼軸測定器であるARGOSを使用しており、これにより高い精度で患者様の眼軸を測定することができ、屈折誤差が最小限となる眼内レンズ度数の選択が可能となっております。また、ARGOSは他社の検査機器では測定できないような進行した白内障でもほぼ100%測定が可能となっており、多くの患者様の術後視力の向上に繋がっています。また、角膜形状解析装置であるCASIA 2を使用することにより、通常の白内障手術前に測定される角膜前面乱視だけではなく、角膜後面乱視や不正乱視などによる高次収差の測定が可能となり、多焦点眼内レンズの適応の有無や術後の乱視の軽減を高い精度で行うことができております。当院ではさらに、ORAシステムという手術中にリアルタイムで眼の状態を測定し、世界中のビッグデータと比較することで最適な眼内レンズ度数や乱視軸を選ぶことができる器械を導入・使用しており、患者様の術後の屈折誤差を可能な限り少なく、精度の高い手術を受けて頂けるよう心がけています。

 当院では手術するかどうか迷われている方検診などで白内障を指摘され今すぐ手術が必要ではないものの将来的な選択肢を知りたい方など、すべての患者様に正しい情報を知ってもらい、将来を見据えた治療を選択していただきたいと考え、白内障無料相談会も開催しております。どうぞお気軽にお問い合わせください。