院長コラム

多焦点眼内レンズ

多焦点眼内レンズ

 

前回のブログでは単焦点レンズについて、詳しくお話させて頂きました。次は、白内障手術で使われる、多焦点眼内レンズについて、取り上げたいと思います。

 多焦点眼内レンズとは、焦点が合う距離が複数あるレンズのことです。焦点があう特定の距離が複数(現在発売されているものでは、2~5か所)ある、「多焦点眼内レンズ」と呼ばれているレンズに加えて、遠距離から近距離まで連続して切れ目なく見える「焦点深度拡張型眼内レンズ」も合わせて、多焦点眼内レンズとよばれています。

 それぞれに特徴があるため、以下、このブログ内では「多焦点眼内レンズ」と「焦点深度拡張型眼内レンズ」と分けて記載することとします。今回のブログでは、焦点が合う特定の距離が複数ある「多焦点眼内レンズ」について説明したいと思います。

 

多焦点眼内レンズの特徴

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  •  焦点の合う特定の距離が複数あり、光を分散させることで、それぞれの距離にピントを合わせることが可能な眼内レンズです。3焦点眼内レンズを例にとってみると、遠距離・中距離・近距離の3か所にピントを合わせることができます。単焦点眼内レンズと比較して、自然に近い見え方を実現することができます。ただし、光を分散させるため、見え方の質(例えば、色のコントラストなど)は劣ることが多いです。
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           (Alcon HPより)

 

 また、多焦点眼内レンズの特性上、暗所で光をまぶしく感じる「グレア」、光の周辺に輪がかかって見える「ハロー」が少なからず発生するため、夜間の運転を重視される方は選ばれる際に注意が必要となります。

 

         (Alcon HPより一部引用)

                             

 

 当院で使用している多焦点眼内レンズ

Clareon® PanOptix®

 2019年に日本初の3焦点眼内レンズとして発売したAcrySof® PanOptix®を、単焦点眼内レンズClareon®と同じ新素材を使用して進化した眼内レンズで、2022年4月に世界に先駆けて国内で発売開始となった3焦点眼内レンズになります。こちらは、眼内レンズの費用を除いた部分に保険適用が可能な選定療養を利用して白内障手術を受けることができます。

                                                    (Alcon HPより)

 

 この眼内レンズは、目に入ってきた光を、焦点距離である近方40cm、中間60cm、遠方5mの3か所に振り分けることで、読書やスマートフォン使用などに適した「近距離」、パソコンや料理などに適した「中距離」、テレビ視聴や運転、ゴルフなどのスポーツに適した「遠距離」に焦点を合わせ、実生活に適した近方から遠方までの距離がクリアに見えるように設計されています。乱視を矯正可能なレンズも用意されており、軽度の乱視から矯正することが可能となっています。海外の臨床試験においてPanOptix®を挿入した患者様のうち96%が「眼鏡が不要になった」と回答しており、日常生活でなるべく眼鏡を使用したくない方におすすめすることの出来る眼内レンズになります。

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  •                                            (Alcon HPより)

 また、多焦点眼内レンズを挿入した場合、夜間に光源を見た場合に、眩しく感じたり(ハロー)、光の周辺に輪がかかって見えたり(グレア)することがありますが、PanOptix®の3焦点設計は一般的な多焦点レンズと比較し、低減していることが示されています。しかしながら、多焦点眼内レンズの設計上、ハロー・グレアは少なからず発生します。時間の経過とともに慣れていくことが多いとはいえ、個人差も大きく、夜間の運転を重視される方はこちらのレンズを選択する際は注意が必要です。

        (Alcon HPより)

 

 

Intensity(インテンシティ)

 Intensity(インテンシティ)はイスラエル(Hanita lens社)製の世界唯一の回折型「5焦点眼内レンズ」です。焦点距離は近方から40㎝、中近60㎝、中間80㎝、遠中130㎝、遠方の5箇所で、その特性として近くから遠くまで連続的に見ることのできる眼内レンズです。近方も焦点距離が40cmと見やすく、海外の臨床研究では85%の患者様が眼鏡が不要と回答されています。

 

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                                 ↑光のぎらつきが少ない

 

 回折格子の先端をなめらかで丸みを帯びている構造にすることにより、夜間の運転の際に光がまぶしく感じるハロー・グレアが最小限に抑えられています。5か所に光を分配していますが、その際に生じる光エネルギーロスが6.5%と少なく、光エネルギーが最大限に活用されている為、見え方の質である「コントラスト感度」も他の多焦点眼内レンズに比べてもかなり良好であると言えます。インテンシティは視力だけでなく見え方の質も良い為、患者様の様々な日常の活動をカバーできるレンズです。回折型の眼内レンズでは最もお勧めすることのできる眼内レンズですが、残念ながら日本では未承認の眼内レンズのため、検査費用や手術費用は全て自由診療となります。

 

 

  •  白内障手術に関して、分からないことや不安なことがありましたら、どんな些細な事でも、お気軽にご相談ください。
  • こちらにも詳しい説明がございますので、宜しければご参考にしてください。
  • https://www.ebisu-ganka.com/lens/