院長コラム

3焦点眼内レンズ、ファインビジョンHPの取扱いを開始しました。

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こんにちは。

当院の白内障手術で選択していただける多焦点眼内レンズが増えました。

今回は、新たに追加した、眼内レンズ「ファインビジョンHP」について詳しく紹介したいと思います。

FINEVISION HP

ファインビジョンHPはBVI社から発売されている3焦点眼内レンズです。BVI社からはファインビジョンシリーズとして、いくつかの多焦点レンズが発売されておりましたが、これまでは親水性アクリル素材を使用したものでした。ファインビジョンHPは新しい素材として疎水性アクリル素材が使われており、親水性アクリル素材に比べて後発白内障の低減などの面で優れています。

ファインビジョンHPは2019年にヨーロッパで発売が開始され、国内でも保険のきかない自費診療として使用実績がありましたが、昨年5月に国内承認を取得、選定療養の対象となりました。

それでは、レンズの詳しい特徴について、説明したいと思います。

特徴1 手元の距離のピントが合いやすい

レンズ面の設計を工夫することにより、遠方から近方へスムーズでバランスの取れたエネルギー配分を実現するように設計されており、約33cmから遠方まで良好な視力を得ることができます。

下記図のように国内臨床試験*1において、ファインビジョンHPは-3.0Dから+0.5Dまでのデフォーカスで1.0以上の良好な視力が得られたことが示され、91.3%の患者様が眼鏡不要と回答されました。

このことから、ファインビジョンHPは遠方・中間・近方全ての距離で良好な視力が期待できる眼内レンズと言えるでしょう。

*1 Mori Y, Miyata K, Suzuki H, et al. Clinical Performance of a Hydrophobic Acrylic Diffractive Trifocal Intraocular Lens in a Japanese Population. Ophthalmol Ther. 2022 Dec 21;1-12.

また、他社の3焦点眼内レンズと比較して近方により多くの光エネルギーを配分しているため、近距離での作業時に焦点が合いやすくなっています。例えば、当院で使用しているパンオプティクスの近方距離は40cmとなっていますが、ファインビジョンHPの近方距離は約33cmとなっておりますのでより近方の作業を重視される方にお勧めできる眼内レンズとなります。

特徴2 夜間の異常光視症を軽減する工夫

多焦点眼内レンズのデメリットでもある、夜間光視症(ハロー・グレア・スターバースト)を軽減するべく、独自のデザインを取り入れており、明所と暗所で瞳孔の大きさが変化した際に、外から取り入れる光配分を変えることによって、異常光視症の軽減を可能にしています。

また、コンボリューションという回折格子の先端をなめらかで丸みを帯びたデザインにすることにより、スターバーストという異常光視症も抑えられています。

このように、従来の3焦点眼内レンズと比べて、メリットの多いファインビジョンHPですが、すべての方にお勧めできるわけではありません。

ファインビジョンHPが向かない方

・PC作業を重視される方

ファインビジョンHPの中間距離は約80cmとなっており、PCの作業をする際にはピントが合いにくい可能性があります。

PCの作業を重視される方は、3焦点眼内レンズでも中間距離が約60cmとなっているパンオプティクス、5焦点眼内レンズのIntensity、焦点深度拡張型のVivityMiniwellの方が、適しているといえるでしょう。

・強度近視の方

ファインビジョンHPの製造範囲は+10.0Dからとなっており、近視が非常に強い方は適正なレンズを選択できない可能性があります。近視の強い方が選択できる眼内レンズには、選定療養の場合、3焦点眼内レンズのパンオプティクスや焦点深度拡張型レンズのVivity、自費診療の場合、焦点深度拡張型のMiniwellEvolveがあります。

・乱視の強い方

選定療養で承認されているファインビジョンHPは、残念ながら乱視矯正に対応していないため、乱視の強い方には向きません。当院で使用している他の多焦点眼内レンズのうち、選定療養の眼内レンズであればパンオプティクス、自由診療の眼内レンズであればIntensityMiniwellEvolveは乱視矯正にも対応しています。

 

いかがでしたでしょうか。ファインビジョンHPは遠くから近くまで見ることのできる3焦点眼内レンズであり、特に手元の見やすさが優れていること、異常光視症が少なく抑えられていることが特徴の眼内レンズになります。強度の近視に対応する眼内レンズがないこと、乱視矯正用の眼内レンズがまだ国内では認可されていないことから、適応となる症例が限られてしまいますが、興味がある方は是非当院にご相談ください。