院長コラム

後発白内障とは

白内障

こんにちは、白内障手術後の合併症の一つである後発白内障について取り上げたいと思います。術後5年で約30%1)の患者さんに発症するといわれている合併症ですが、その名前から白内障の再発だと思われる方が多いようです。実は全く別の疾患である後発白内障の症状や原因、治療法などを今回はお話しさせて頂きます。

後発白内障とその症状

白内障手術を受けると、白内障以外に眼の病気が無ければ、ほとんどの患者さんでは見え方が改善します。しかし、白内障手術後、数か月~数年してから「まぶしい」「かすんで見える」といった白内障と同様の症状を自覚されることがあります。その原因の1つに、後発白内障があります。後発「白内障」という名前と症状から、また白内障になったのかと思われる方が多いのですが、白内障手術では濁った水晶体を全て除去しているため、白内障が再発することはありません。後発白内障は白内障とは別の疾患であり、白内障手術後において発生頻度の高い合併症ですが、再度の手術は必要なく外来での治療で良くなりますので心配はありません。後発白内障の原因と治療法について説明したいと思います。

後発白内障の原因

水晶体は水晶体嚢という透明な袋に包まれています。白内障手術では、水晶体嚢の前面に円形に穴を開け、中身である濁った水晶体を超音波で破きながら吸引し、残った水晶体嚢の中に眼内レンズを挿入します。しかし、術後しばらくすると、水晶体嚢の中に残っている水晶体の細胞が増殖して水晶体嚢と眼内レンズの間に入り込み、水晶体嚢を濁らせてしまいます。軽度であれば症状はありませんが、進行すると通常の白内障と同じように眼内への光の透過性が落ちるため、視力が低下してしまいます。これを後発白内障といい、術後5年で約30%の患者さんに発症するといわれています。点眼薬の使用や眼内レンズの形状を工夫することで進行を遅らせることが可能になってきましたが、現在のところ完全な予防法はまだありません。

後発白内障になりやすい人

後発白内障は水晶体の細胞が増殖することで発症するため、代謝が活発な若年者の方に発症しやすい傾向があります。特に小児の白内障手術後は必発となり、逆に90歳以上のご高齢の方には発症しづらくなっています。また、なりやすい方の要因としては偽落屑症候群、ぶどう膜炎、アトピー性皮膚炎、網膜色素変性症、未熟児網膜症、強度近視があげられます2)

後発白内障の予防

後発白内障は、先にもお話したとおり、治癒過程で、水晶体嚢と眼内レンズの間に水晶体の細胞が入らないようにすることが重要です。最近では、レンズの光学部(丸い部分)のエッジ形状や、眼内レンズの表面を変えることで、水晶体囊と眼内レンズが早期に接着するよう改良されたレンズなども開発されており、そのような眼内レンズを選択することも予防する手段の一つとなります。

後発白内障の治療

治療法としては、レーザーを用いて濁ってしまった水晶体嚢を切開することで、目に光が入る中心部から濁りを除去することができ、視力は改善します。点眼で麻酔をした後にコンタクト型のレンズを目に接着させてからレーザーを照射します。レーザー治療は痛みも無く、数分程度と短時間で終わりますので、外来通院での治療が可能です。

レーザー治療後の経過

レーザー後には炎症が生じたり、眼圧が上がることがありますので、炎症を抑える点眼を挿していただきます。また、レーザー後はレーザーで破った水晶体嚢の破片や水晶体の細胞が目の中に散らばるので、ゴミが飛んでいるように見える「飛蚊症」という症状が出ることがありますが、自然に吸収されていき徐々に改善します。ただし、まれに網膜剥離などの重篤な合併症を起こすことがありますので、1週間後に眼底検査を行い問題ないこと確認します。治療後に痛みや見づらさなどの症状がでた場合にはすぐに眼科を受診する必要があります。後発白内障は一度治療すれば再発することは稀です。

 

1)Schaumberg DA, Dana MR, Christen WG, Glynn RJ: A systematic overview of the incidence of posterior capsule opacification. Ophthalmology 105 (7): 1213-1221, 1998
2)安藤展代, 大鹿哲郎, 木村博和: 後発白内障の発生に関与する多因子の検討. 臨床眼科 53 (1): 91-97, 1999